広角レンズの使い方と特徴
広角レンズは広い範囲を写すことができるレンズです。一般的には35ミリ以下の焦点距離の短いレンズのことを広角レンズと呼びます。画角が広いので広範囲を写すことができ、旅行先で出会ったダイナミックな自然の風景を広大に写したり、建築物の全体像を撮りたい場合など広い景色を写したいときに活躍してくれるレンズです。
広角レンズは風景を大きく切り取るためのもの、というイメージが強いかと思いますが、他にもいろんな表現ができるレンズです。広角レンズの使い方と特徴を知って表現の幅を広げましょう。
広角レンズにも単焦点レンズとズームレンズがあります。
【 代表的な広角レンズ 】
・AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED(ニコンフルサイズ用)
・EF16-35mm F2.8L III USM(キヤノンフルサイズ用)
・24mm F3.5 DG DN(シグマフルサイズ用)
・XF14mm F2.8 R(フジフィルムAPS-C用)
・E 10-18mm F4 OSS SEL1018(ソニーAPS-C用)
・AF 10-24mm F/3.5-4.5 Di II VC HLD Model B023(タムロンAPS-C用)
・M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6(オリンパスマイクロフォーサーズ用)
広角レンズの使い方1:広い範囲を撮る
旅先で出会った広大な風景、山や海など目に見えているものをなるべく多く入れたいときに広角レンズの出番です。広さをダイナミックに表現できます。また狭い部屋の中で室内全体を写したい時や、後ろに下がれない状況などでも広角レンズは役立ちます。
このように広くダイナミックな風景を切り取ることができます。広角レンズの代表的な使い方です。広い範囲を写すことができるので、不要なものが写りこむこともあります。そのため、初心者の方には構図を取るのが難しいと思われる方も多いと思います。
標準50mmで撮影
広角16mmで撮影
上の写真のように銅像を同じ大きさぐらいになるように撮り、標準50mmで撮ったものと広角16mmで撮ったものでは写りこむ範囲に違いがあります。広角レンズは周りの環境の情報がたくさん入り込みます。不要なものがあっても写り込んでしまいます。そのため広角レンズは構図が難しいと言われています。
しかし広角レンズの良い所は被写体にぐっと近寄れることです。撮りたいものに出来るだけ近づいてしまえば不要なものは画面から消えてくれます。広角レンズで構図に迷ったらこの方法も実践してみてください。
広角16mmで撮影。被写体に15cmまで近づいて撮影。
広角レンズには最短撮影距離というものがあり、そのレンズによって最短撮影距離には違いがあります。手持ちのレンズが何センチまで被写体に寄ることができるか知っておくと、できる限り被写体に近づいて大きく写すことができます。
広角レンズは最短撮影距離が15センチ〜など短いものが多いので被写体にぐんと近づき、背景も入れて撮ることで遠近感が出て印象的な写真に仕上がります。
また、構図を決めるときに必ず必要なことが画面の水平を取ることです。広角レンズは特に画面の傾きが目立ちやすいので注意しましょう。良い景色に出会って、良い露出で撮れたとしても、画面が不安定に傾いているだけでイマイチな写真になってしまいます。地平線や海の水平線などは特に傾かないように配置しましょう。ファインダーや液晶画面に水平ラインやグリッドを表示させて撮ると良いですね。
このように広角レンズは構図の作り方がシビアになりますので、意識して作る必要があります。
広角レンズの使い方2:ピントの合う範囲が広い
ピントが合ったように見える範囲のことを被写界深度と言います。広角レンズはこの被写界深度が深いので手前から奥までピントの合ったパンフォーカスの写真が撮れます。パンフォーカスは主に風景写真やスナップ撮影で使われている手法です。
広角18mmで撮影
逆に言うと広角レンズはボケにくいという特徴があります。
人間の目は一点を見つめるとその前後はピントがボケて見えます。広角レンズは人間の目では実現できないパンフォーカスの世界を表現することができます。日本人はボケ表現の方を好む傾向にあるようですが、写真家の土門拳に代表されるリアリズム写真のように、主とした被写体とその周りの環境も含めて全てをくっきり写し込むという表現も広角レンズなら可能です。
広角レンズの使い方3:遠近感を強調する
広角レンズは手前のものは大きく写り、距離が離れるほど小さく写るという特徴があります。そのため手前の被写体と背景との距離感が強調されるので奥行きが感じられ、遠近感(パースペクティブ)のある写真に仕上がります。
また広角レンズは画面周辺部に「歪み」が強く出ます。特に人物撮影などでは注意が必要です。レンズの端に写るものほど大きく歪みが出てしまいますので、人物の頭や顔が歪んだり大きく写ってしまい不自然な写真になります。この歪みのクセを効果的に使う方法もあります。うまく使えば、腕や足を長く写す効果を出すこともできます。
逆に歪みを抑えた広角レンズもあります。歪曲収差を抑えたものやゼロディストーションと呼ばれるレンズです。歪みが抑えられているので主に建物や建築物を撮る場合には有効なレンズです。広角だけではなく標準、望遠、マクロといろんな種類のレンズがありますが、それぞれに使い方と特徴があります。レンズの特徴を活かした撮影ができるようになれば写真の腕はぐんと上がりワンランク上の写真が撮れるようになりますよ。
広角レンズは景色を広く撮るためのものというだけではなく、パンフォーカスや遠近感、歪みといった表現ができることを意識して使ってみてください。